ネットワーク工程表の問題は、「どの経路がいちばん長いか」を見つける問題です。 図が出てきても、やることは作業の順序と日数を足し算していくことだけです。 この記事では図を使わず、作業の一覧表から同じ計算をしてみます。
まず用語を3つ
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| クリティカルパス | 開始から完了までの経路のうち、所要日数の合計が最も長い経路。この経路の日数が工期になる |
| トータルフロート(全余裕) | その作業が遅れても、工期を延ばさずに済む最大の日数 |
| フリーフロート(自由余裕) | その作業が遅れても、後続作業の最早開始を遅らせずに済む日数 |
クリティカルパス上の作業は、トータルフロートが0です。1日でも遅れると工期が延びます。
例題
次の作業で工事を行う。
| 作業 | 日数 | 先に終わっている必要がある作業 |
|---|---|---|
| A | 3 | なし(最初の作業) |
| B | 5 | A |
| C | 4 | A |
| D | 6 | B |
| E | 2 | C |
| F | 3 | D と E の両方 |
手順1 経路を全部書き出す
最初から最後までの経路は2本です。
| 経路 | 日数の合計 |
|---|---|
| A → B → D → F | 3+5+6+3 = 17日 |
| A → C → E → F | 3+4+2+3 = 12日 |
最も長い A → B → D → F がクリティカルパスで、工期は 17日です。 小さな問題なら、この「経路の書き出し」だけで答えが出ます。
手順2 最早開始時刻を前から求める(前進計算)
各作業をいちばん早く始められる日を、前から順に求めます。 合流する作業では、先行作業のうち遅く終わるほうに合わせます。
| 作業 | 最早開始 | 最早完了(=最早開始+日数) |
|---|---|---|
| A | 0 | 3 |
| B | 3 | 8 |
| C | 3 | 7 |
| D | 8 | 14 |
| E | 7 | 9 |
| F | 14(D の14と E の9の大きいほう) | 17 |
手順3 最遅完了時刻を後ろから求める(後進計算)
工期17日を守るために、各作業が遅くともいつまでに終わればよいかを、後ろから求めます。 分かれる作業では、後続作業のうち早く始める必要があるほうに合わせます。
| 作業 | 最遅完了 | 最遅開始(=最遅完了−日数) |
|---|---|---|
| F | 17 | 14 |
| D | 14 | 8 |
| E | 14 | 12 |
| B | 8 | 3 |
| C | 12(E の最遅開始) | 8 |
| A | 3(B の3と C の8の小さいほう) | 0 |
手順4 余裕日数を求める
- トータルフロート = 最遅完了 − 最早開始 − 日数
- フリーフロート = 後続作業の最早開始 − 自分の最早完了
| 作業 | トータルフロート | フリーフロート |
|---|---|---|
| A | 0 | 0 |
| B | 0 | 0 |
| C | 12−3−4 = 5 | 7−7 = 0 |
| D | 0 | 0 |
| E | 14−7−2 = 5 | 14−9 = 5 |
| F | 0 | 0 |
トータルフロートが0の A・B・D・F が、手順1で見つけたクリティカルパスと一致します。
C と E の違いが大事
C も E もトータルフロートは5日ですが、この5日は C と E で共有している余裕です。
- C が3日遅れると、E の開始が3日遅れ、E に残る余裕は2日になる(C のフリーフロートは0)
- E が3日遅れても、F の開始には影響しない(E のフリーフロートは5)
フリーフロートはトータルフロートより大きくならない、という関係も覚えておきましょう。
工期短縮の考え方
工期を縮めたいときは、クリティカルパス上の作業を短くします。 クリティカルパス以外の作業を短くしても、工期は変わりません。 また、クリティカルパス上の作業を短くしていくと、別の経路が新たにクリティカルパスになることがあります。
ほかの工程表との使い分け
| 工程表 | 特徴 |
|---|---|
| バーチャート | 作業ごとの日程が横棒で一目でわかる。作成が簡単。作業間の関係やクリティカルな作業はわかりにくい |
| ガントチャート | 作業ごとの進捗率を示す。各作業の所要日数や作業間の関係はわからない |
| ネットワーク式工程表 | 作業の順序関係、クリティカルパス、余裕日数がわかる。作成に手間がかかる |
| 斜線式工程表 | トンネルや道路など、延長方向に進む工事に向く |
| 曲線式工程表(出来高累計曲線) | 工事全体の進み具合を累計で示す。予定と実績の比較に使う |
覚え方のコツ
- 「クリティカルパス=いちばん長い道、余裕0の道」
- 前進計算は「合流では大きいほう」、後進計算は「分岐では小さいほう」
- 「トータルは工期まで、フリーは次の作業まで」の余裕。だからフリー ≦ トータル
- 迷ったら、まず全経路の日数を書き出す。小問の多くはそれで解ける
ネットワーク工程表は、手順どおりに計算すれば必ず答えが出る得点源です。 例題の表を白紙から再現できるまで、一度手を動かしてみてください。